この街には全てが有るという。衣類も食事も住環境も、何にも困ることはない。
望めば望むだけ手に入る。この街だけで、全てが揃う。
他の何にも頼らずに存続できる完全環境計画都市(アーコロジー)――――アムネジア。
全てを持つその都市が、他の全てを不要と断じ、世界との交流を閉ざすのは、至極、当たり前のように思えた。



そして、いつしか。長い、永い年月が過ぎ去ったとき。
ついに都市(せかい)は、世界(とし)を忘れた。



完全が故に、何者も必要としなかった都市は。
完全が故に、包む世界を捨て去った。

永久の孤独。

それは世界を忘れた罰だっただろうか。或いは、その完全さの代償か。
ともあれ孤独は、都市が、全てである証拠だった。



そう。



孤独を縁に都市は在る。
だから私はこう呼ぼう。我らが愛おしき世界、愚かなる都市のことを。







――――孤縁都市アムネジア、と。






The city of loneliness, which called Amnesia.
Enter the City,Enter the World.
Yes or No.



inserted by FC2 system